当航空部は2016年10月に絶対に起こしてはいけない重大な事故を起こしてしまいました。
事故後、ミーティングを多数の関係者を含めて重ね、また大空を飛ぶためになにをすべきなのかを考えてまいりました。
我々が検討し作成した対策内容に関して、第三者である有識者の方々に検証して頂きました。
それらを踏まえ、以下日本学生航空連盟の安全対策に加え、早稲田大学が独自に行う主な対策を記します。
当部は安全第一に訓練を行い、常に安全性の追求をします。
操縦技術向上に向けた対策
1. 自家用操縦士取得後の技量向上プログラムの策定
自家用操縦士取得後もシラバス及び訓練カリキュラムに則った訓練(高度な空中 感覚を養う課目、クロスカントリートレーニングなど)を実施する。これにより、 単座機によるソアリング技術の向上に任せるだけでなく、新たな目標の設定と科目 の実施、更に定期的な複座機による技量及び知識の確認を行い、常に技量及び知識 の向上を図る。
2. 搭乗後の振り返り
単座機でフライトを実施した後には、必ず『自己振り返りシート』を作成し、パ イロット本人による飛行内容の再確認とその内容をコーチも共有出来るようにする。 その中で、相談や問題が合った場合には GPS や動画により、操縦特性を把握する 仕組みを構築し、コーチがフライト内容を把握出来る体制を整える。
学科教育充実に向けた対策
1. 教材とコーチによる座学の充実
2016 年 4 月より導入してきた教材と進捗管理の共有システムを定着させ、教育の質の向上とコーチとの情報共有を改善する。学生が行ってきた講 義のうち、特に失速やスピンといった重要科目に関しては、初歩の段階からコーチ が関与し、コーチや専門家による特別講義を実施する。また、シラバスの見直しを 定期的に行う。
2. 理解度の向上に向けた取り組みの実施
アクティブ・ラーニングや小テストの導入により、理解度の向上と把握を行って いく。
安全システムの構築及び意識向上に向けた対策
1.ヒヤリハット報告書等の活用
ヒヤリハット報告に関しては、合宿前に実施するミーティング(確認会など)に おいて、他校の事例も含め振り返りを行い、再発防止の為の仕組みを構築する。過 去の事故事例に関しては、現在実施している勉強会を引き続きアクティブ・ラーニ ングの要素を取り入れたワークショップとして開催し、全員で事故原因を検証、再 発防止策を検討すると共に、開催の都度その理解度を確認する。
2.運航中の安全担当者の設置
運航全体を統括する担当者は今まで配置されていたが、安全性確保の観点から客 観的にリスクを把握し、適切な運航状況を維持する担当を配置し、無理のない訓練 体制が構築できるようにしていく。学生自身にも担当を受け持たせることで安全意 識の向上を図る。
3. 振り返り時間を確保した訓練体制の構築
訓練中においては、フライト前後における学生とコーチの間の十分な会話が出来 る時間、個人としてフライトを振り返ることが十分出来る時間など、必要な時間を 持つことが出来るように管理していく。また、宿舎においても、当日の振り返り、 翌日の目標の検討など、各人が考える時間を持てるよう時間の管理を行っていく。
健康管理に関しての対策
1. 健康チェック体制の構築
これまで当日の自主報告で行っていた健康チェックを見直す。病気・服薬・睡眠・ ストレス・飲酒・疲労・食事等に関する事項を当日までの一定期間を通した健康チ ェック帳で記録し、それを基にコーチが客観的な判断を行う。また、なるべく早い 段階で選手から相談してもらえるような関係性・雰囲気をつくり、フライト前のブ リーフィングにおいても健康確認のコミュニケーションをとり、危険排除の徹底を 図る。
搭乗機体に関する対策
1. 機種乗り換え時の確認の実施
異なる機種へ乗り換える際には、意識の切り替えが非常に重要である。したがっ て、今後は訓練や競技における同日中の搭乗に関して、機種の乗り換えの頻度の見 直しと明確な意識の切り替えをさせることを確認する。
指導体制改善への対策
1. コーチ間における情報共有方法の再構築
これまでの紙面だけの情報共有に加え、「電子コーチ間引き継ぎ帳」の導入を検討 する。訓練中だけでなく、訓練後の移動時や空時間においても随時訓練生の情報を 追加入力することが可能であることや、訓練に参加していないコーチも随時情報確 認が出来るようになることから、情報共有を図るために有効なものと考えられる。 また、多くのコーチによる指導内容の違い(方向性は同じであるが説明の仕方、言 葉のニュアンス・表現など)に関しては、各コーチにおける教え方の統一を図ると 共に、訓練カリキュラムにおける進度測定の基準を明確にし、バラつきが発生しな いようコーチ会を通じ徹底していく。
2. メンター制度の導入
下級生と上級生、学生とコーチ間において、それぞれ適切なメンターを設置し、 訓練、学業、日常生活における悩みや相談を受けることで、不安を抱えたまま訓練 に臨むことの無い様、対応していく。特に、学生とコーチとの間においては、大き な年齢差が生ずるケースもあることから、年齢の近いOBやOGにメンターとして の役割を委ね、航空部内におけるコミュニケーションの活性化を促せられるように する。
以上に加え、以下の案について導入を今後継続的に検討してまいります。
1. ポリシーマニュアルの作成
当部においてグライダー運航や学生スポーツとしての基本的な理念をまとめたポ リシーマニュアルを作成し、部活動全般に関わる価値観や考え方を全員で共有する。 これにより、優れた安全文化や組織文化の醸成を促す。
2. 状況認識能力に関する訓練の検討
状況認識能力に関する訓練は今後重要な内容と考えられ実践すべき事項であるが、 危険を伴う側面も否定できないため、専門家を交え、実施方法等を十分に検討した 上で取り組んでいくこととする。
3. 航空スポーツコーチングのあり方に関する検討
既に十分検討され成果が出ている一般スポーツにおけるコーチングと、まだ未開拓である航空スポーツにおけるコーチングに関して、今後コーチングの専門家を含め検討を行っていく。部外の講師の協力を得ながら、コーチングやチームビルディ ングに関する理解を深める。
4. 安全会議の設置
今回の事故をきっかけに実施する主な対策の有効性を評価し、今後、より安心し て活動を行うための仕組みを定期的に見直すための安全会議(10月 10日前後に実施)を設置する。
早稲田大学航空部は、創部86年目にして初めての大きな悲しみと試練を経験することとな りました。『空を愛する者は、決して空では死んではいけない。』この思いを胸に誓い、今後二度と 同じ悲しみを繰り返すことのないよう、これまで取り組んできた対策を部員全員がしっかりと胸 に刻み、かつ、後輩へと確実に引き継ぎ、新生早稲田大学航空部として安全を最優先とする訓練 に取り組んでいきたいと思います。
事故後、ミーティングを多数の関係者を含めて重ね、また大空を飛ぶためになにをすべきなのかを考えてまいりました。
我々が検討し作成した対策内容に関して、第三者である有識者の方々に検証して頂きました。
それらを踏まえ、以下日本学生航空連盟の安全対策に加え、早稲田大学が独自に行う主な対策を記します。
当部は安全第一に訓練を行い、常に安全性の追求をします。
操縦技術向上に向けた対策
1. 自家用操縦士取得後の技量向上プログラムの策定
自家用操縦士取得後もシラバス及び訓練カリキュラムに則った訓練(高度な空中 感覚を養う課目、クロスカントリートレーニングなど)を実施する。これにより、 単座機によるソアリング技術の向上に任せるだけでなく、新たな目標の設定と科目 の実施、更に定期的な複座機による技量及び知識の確認を行い、常に技量及び知識 の向上を図る。
2. 搭乗後の振り返り
単座機でフライトを実施した後には、必ず『自己振り返りシート』を作成し、パ イロット本人による飛行内容の再確認とその内容をコーチも共有出来るようにする。 その中で、相談や問題が合った場合には GPS や動画により、操縦特性を把握する 仕組みを構築し、コーチがフライト内容を把握出来る体制を整える。
学科教育充実に向けた対策
1. 教材とコーチによる座学の充実
2016 年 4 月より導入してきた教材と進捗管理の共有システムを定着させ、教育の質の向上とコーチとの情報共有を改善する。学生が行ってきた講 義のうち、特に失速やスピンといった重要科目に関しては、初歩の段階からコーチ が関与し、コーチや専門家による特別講義を実施する。また、シラバスの見直しを 定期的に行う。
2. 理解度の向上に向けた取り組みの実施
アクティブ・ラーニングや小テストの導入により、理解度の向上と把握を行って いく。
安全システムの構築及び意識向上に向けた対策
1.ヒヤリハット報告書等の活用
ヒヤリハット報告に関しては、合宿前に実施するミーティング(確認会など)に おいて、他校の事例も含め振り返りを行い、再発防止の為の仕組みを構築する。過 去の事故事例に関しては、現在実施している勉強会を引き続きアクティブ・ラーニ ングの要素を取り入れたワークショップとして開催し、全員で事故原因を検証、再 発防止策を検討すると共に、開催の都度その理解度を確認する。
2.運航中の安全担当者の設置
運航全体を統括する担当者は今まで配置されていたが、安全性確保の観点から客 観的にリスクを把握し、適切な運航状況を維持する担当を配置し、無理のない訓練 体制が構築できるようにしていく。学生自身にも担当を受け持たせることで安全意 識の向上を図る。
3. 振り返り時間を確保した訓練体制の構築
訓練中においては、フライト前後における学生とコーチの間の十分な会話が出来 る時間、個人としてフライトを振り返ることが十分出来る時間など、必要な時間を 持つことが出来るように管理していく。また、宿舎においても、当日の振り返り、 翌日の目標の検討など、各人が考える時間を持てるよう時間の管理を行っていく。
健康管理に関しての対策
1. 健康チェック体制の構築
これまで当日の自主報告で行っていた健康チェックを見直す。病気・服薬・睡眠・ ストレス・飲酒・疲労・食事等に関する事項を当日までの一定期間を通した健康チ ェック帳で記録し、それを基にコーチが客観的な判断を行う。また、なるべく早い 段階で選手から相談してもらえるような関係性・雰囲気をつくり、フライト前のブ リーフィングにおいても健康確認のコミュニケーションをとり、危険排除の徹底を 図る。
搭乗機体に関する対策
1. 機種乗り換え時の確認の実施
異なる機種へ乗り換える際には、意識の切り替えが非常に重要である。したがっ て、今後は訓練や競技における同日中の搭乗に関して、機種の乗り換えの頻度の見 直しと明確な意識の切り替えをさせることを確認する。
指導体制改善への対策
1. コーチ間における情報共有方法の再構築
これまでの紙面だけの情報共有に加え、「電子コーチ間引き継ぎ帳」の導入を検討 する。訓練中だけでなく、訓練後の移動時や空時間においても随時訓練生の情報を 追加入力することが可能であることや、訓練に参加していないコーチも随時情報確 認が出来るようになることから、情報共有を図るために有効なものと考えられる。 また、多くのコーチによる指導内容の違い(方向性は同じであるが説明の仕方、言 葉のニュアンス・表現など)に関しては、各コーチにおける教え方の統一を図ると 共に、訓練カリキュラムにおける進度測定の基準を明確にし、バラつきが発生しな いようコーチ会を通じ徹底していく。
2. メンター制度の導入
下級生と上級生、学生とコーチ間において、それぞれ適切なメンターを設置し、 訓練、学業、日常生活における悩みや相談を受けることで、不安を抱えたまま訓練 に臨むことの無い様、対応していく。特に、学生とコーチとの間においては、大き な年齢差が生ずるケースもあることから、年齢の近いOBやOGにメンターとして の役割を委ね、航空部内におけるコミュニケーションの活性化を促せられるように する。
以上に加え、以下の案について導入を今後継続的に検討してまいります。
1. ポリシーマニュアルの作成
当部においてグライダー運航や学生スポーツとしての基本的な理念をまとめたポ リシーマニュアルを作成し、部活動全般に関わる価値観や考え方を全員で共有する。 これにより、優れた安全文化や組織文化の醸成を促す。
2. 状況認識能力に関する訓練の検討
状況認識能力に関する訓練は今後重要な内容と考えられ実践すべき事項であるが、 危険を伴う側面も否定できないため、専門家を交え、実施方法等を十分に検討した 上で取り組んでいくこととする。
3. 航空スポーツコーチングのあり方に関する検討
既に十分検討され成果が出ている一般スポーツにおけるコーチングと、まだ未開拓である航空スポーツにおけるコーチングに関して、今後コーチングの専門家を含め検討を行っていく。部外の講師の協力を得ながら、コーチングやチームビルディ ングに関する理解を深める。
4. 安全会議の設置
今回の事故をきっかけに実施する主な対策の有効性を評価し、今後、より安心し て活動を行うための仕組みを定期的に見直すための安全会議(10月 10日前後に実施)を設置する。
早稲田大学航空部は、創部86年目にして初めての大きな悲しみと試練を経験することとな りました。『空を愛する者は、決して空では死んではいけない。』この思いを胸に誓い、今後二度と 同じ悲しみを繰り返すことのないよう、これまで取り組んできた対策を部員全員がしっかりと胸 に刻み、かつ、後輩へと確実に引き継ぎ、新生早稲田大学航空部として安全を最優先とする訓練 に取り組んでいきたいと思います。